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2020年6月16日ニュース

ファミリービジネス関連の書籍を紹介する「J.P.通信」でEps.18を投稿しました。

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つい最近まで新型コロナウイルス関連一色だったニュースも、人々の興味はより深刻な社会問題へと移りつつあるようです。個人でも集団でも、根本からの「変革」を強いられているように感じてなりません。今回は、そんなめまぐるしい変化の中を生きる人々に力を分け与えてくれるような著書の紹介です。

著者であるロバート・アイガーは、ミッキーマウスでもお馴染み「ウォルト・ディズニー・カンパニー」の会長です。CEOだった当時、ピクサーに始まる大企業買収の成功で一躍有名になり、2019年タイム誌「世界で最も影響力のある100人」および「ビジネスパーソン・オブ・ザ・イヤー」に選出されました。買収の神様とまで呼ばれた彼がビジネスマンとして今でも大切にしていることは、今の社会にぴったりとくるものがあります。自分の在るべき「変化」の形、そのヒントが得られるバイブルだと感じました。是非、ご一読下さい。

J.P.

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「ディズニーCEOが実践する10の法則」

ロバート・アイガー 著

関 美和 訳

 

「本物の誠実さ、つまり自分が何者かを知り、善悪を分かつ一線をはっきりと引くことは、人を導く上での秘密兵器になる。」

著者であるアイガー氏が、自身のキャリアの土台となったという普遍的教訓の1つだ。この1節に含まれるキーワードは、著書の中で何度も出てくる。すなわち①誠実であること、②自分を見失わないこと、③人として(倫理的に)正しいことをすること、だ。一見当たり前に見えるこのルール、実は意外に実践するのは難しいことを彼は自身の経験から学んでいる。そしてこの自称「秘密兵器」こそが、彼がディズニーというブランドを再び押し上げられた理由だったといえる。

翻訳を担当した関氏の力も大きいが、アイガー氏の発言はまるで主観映像をノンストップで見ているようなリアルな表現に加え、正直な心中の告白で一貫している。当時ABCテレビの下っ端として働き始めてから今に至るまで、多くを「誰よりも」必死に学ぼうとしたせいか、その場面1つ1つを鮮明に記憶しているのだ。いかに彼が多くの人々への感謝と敬意を持って、その1人1人と接してきたのかが分かる。ウォルト・ディズニー・カンパニーのCEOという、ビジネスマンなら誰もが憧れる役職に就いたものの、当時のディズニーは肝心要のアニメーションの質が絶世期に比べ明らかに劣っていて、まさに企業存亡の危機に立たされていた。加えて、ディズニーという長きにわたり守られてきたブランドに対するプライドが、最後まで変革の足枷となった。それでも、アイガー氏は少年時代から鍛え上げた根性と、上司たちから学んだ多くの教訓を胸に、絶対に無理だと言われていたピクサーつまりは故スティーブ・ジョブズ氏の会社との買収に成功した。相手への敬意を忘れず、かつCEOとしての自身の立場を理解した上でディズニーにとってやるべきことを貫いた結果、歴史に残る成功を収めた。

故スティーブ・ジョブズ氏との出会いから別れに至るまで、彼が自分に与えた影響がいかに大きなものだったかを、アイガー氏は著書の中でかなりの分量を割いて伝えようとしている。彼がいかにジョブズ氏の才能と能力に尊敬の念を抱き、癌で亡くなった後も多くの場面で彼を思い出すと語る彼の言葉には、紛れもない「感謝と尊敬」の念が溢れている。事実、その後のマーベル買収の際もジョブズ氏が当時の社長に直接電話をした影響は大きかった。そこまでさせたのは、紛れもないアイガー氏の「秘密兵器」の成せるところだろう。彼には、人を信頼させる「魅力」が備わっていた。

今や多くの知的財産と、買収した企業の人財を加え、ディズニーは時代に先駆けた価値を届けられる企業という面で飛躍的に成長した。かつてジョブズ氏と夢見ていた未来が、今まさに形を成しているのだ。アイガー氏が2020年にCEOを退任した時は誰もが驚きを隠せなかったが、彼はディズニーの経営を「世界一幸せな仕事」と言いつつも、1人の人間がずっと権力を持ち続けることへの危機感も持ち合わせていた。そしてこの著書を通して、私たちに自身の体験を次世代へのヒントとして残そうとしている。

いつの世も、目には見えない大きな流れの中で、私たちは度々「勇気のいる選択」を迫られる。それがいつ、どんな形で訪れるのかは誰にも分からない。しかし大事なのは、その選択を迫られた時、自分の軸があるかどうかに尽きるのだろう。意志の存在しないその場しのぎの決断は、いつか後悔という死より重い罰となって自分に降りかかってくる。それはアイガー氏が心に留めている、「自分を見失わないこと」につながると私は思う。

「人生のどの段階にいても、あなたという人間は昔も今も変わらないことを心に留めておいてほしい。それが何よりも難しく、何よりも大切な教訓だ。」

このアイガー氏の言葉から、私たちそれぞれがどんな答えを導き出すのか。これから訪れる未来がある私たち全員で、この「宿題」に取り組んでいければ、と願う。

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