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2021年1月20日ニュース
ファミリービジネス関連の書籍を紹介する「J.P.通信」でEps.25 ジャック・アタリ著/林 昌宏 ・坪子理美訳『命の経済』を投稿しました。
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年が明けたものの、新型コロナウイルスの影響による多くの課題を抱えたまま、やはり晴れやかな年明けとは言いがたいものになってしまいました。それでも、進み続けるのが私たち人間の強さです。次の時代の担い手となる次世代に明るい未来を渡せるよう、私たち今の世代に出来ることを積み重ねてゆきたいと思っています。世のため人のため、コロナ渦の私たちはどうするべきなのか。今回は、そんな難題に「欧州最高峰の知性」が語った著書の紹介です。
本作を執筆したジャック・アタリ氏は、その高い知性を買われ、1981年にフランス大統領顧問、1991年に欧州復興開発銀行の初代総裁などの要職を歴任し、その政治・経済・文化と多岐にわたる知識を活かした多くの著書には、今なお世界的注目が集まっています。ある意味予言者的資質を持っているともいえる著者が見る、今後の社会と私たちの備えるべき事態を解き明かした、まさに「渾身」の一冊です。是非ご一読下さい。
J.P
by FEMO(https://www.fe-mo.jp/)
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『命の経済』
ジャック・アタリ 著
林 昌宏 、坪子 理美 訳
「われわれがパンデミック以前の世界に戻ることはあり得ない・・・元の世界に戻りたいと願うのは、次に人類を襲う大きな災難からさらに深刻な影響を被ることであり、次のパンデミックへの準備、そして、気候変動がもたらす次の大惨事への準備を怠ることを意味する。これは、民主主義への死刑宣告に等しい」。
アタリ氏は本作を通して、はっきりとこう述べている。そして、今回のパンデミックは起こるべくして起こったものだ、とも指摘する。過去20年間の人類と大型パンデミックの事例を振り返ってみて、まず私たちが認めざるを得ない不都合な事実は、現代社会はこの大型パンデミックの発生に対し充分備えることができたはずだったにもかかわらず、それを封じ込め不能なものにし、制御不能にさせてしまったのは、私たち人類の行動パターンにあったということだ。本作の中でのアタリ氏の批判は実に痛烈だ。非常に多くの国が長年にわたり、国民の健康維持は国にとって負担ではなく財産なのだと理解出来ず、病院や介護の現場への財源を削減してきたことへの憤りは、特に熱を帯びていた。その他にも、進みすぎた相互依存(グローバル化)、すでに20年以上にわたり軽薄、利己主義(自分さえよければ他人はどうでもいいという態度)、不誠実、不安定で溢れ返った世界が続いてしまったことも要因だと語る。
「ようするに、すべてが非持続的であり、もはや許容しがたい状態にあると誰もが無意識のうちに感じていたところに、今回のパンデミックが発生したのだ」。
これらの事実を認めた上で、私たちはどうするべきなのか。そのヒントとなるのが、アタリ氏の命名した「命の経済」だ。具体的には、パンデミックとの戦いに勝利するために必要な経済部門と、今回のパンデミックによって必要性が明らかになった経済部門を充実させること。治療薬とワクチンの開発を進め、ヘルスケア(医療、病気予防、健康増進など)の強化や、教育分野に投じる資金の充実に、食生活・・・つまり、「さまざまな形で、直接あるいは間接に、誰もが健やかに暮らせるように尽力するすべての企業をまとめたもの」を指す。それは健康や食糧、住宅、文化以外にも、娯楽や大手流通、電子商取引、情報工学などにも将来成長が期待できる。
今回の新型コロナウイルスの感染症拡大から、私たちはいかに自然への敬意を欠いてきたのかを思い知らされることとなった。人類のあらゆる活動を人工物へと徐々に変化させてきた動きが加速し、人類は自分たちが機械を操る側だと信じながら、反対に、どんどん機械の付属品のような存在になり下がっている。人工物に支配されているのだ。今こそ、「放置された民主主義」から「闘う民主主義」へと、人類は「自己」を取り戻すべく正しい選択をしなければならない。そのために、今ある時間の使いかたを改めて価値あるものに換えていかなければならないのだ。
アタリ氏の掲げる「闘う民主主義」には、以下の5つの原則がある。
1.代議制であること
2.命を守ること
3.謙虚であること
4.公平であること
5.将来世代の利益を民主的に考慮すること
中でも、将来世代の利益を考慮するという原則は、私たち今の世代の幸せのためにも心得ておくべきことだろう。それはすなわち、利他の精神を持つことに通じる。自然と同様、私たちは他者に対しても敬意を欠いてきたのかもしれない。そうであるなら、将来世代が同じ過ちを繰り返さないためにも、私たちがその行いを敬意と利他の精神を持って引き締めて「自己」を高めていくことでしか、彼らの幸福な未来は約束されないだろう。そしてそれは、誰にでも出来る、最高の社会貢献の方法なのだと、私は考える。
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