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2020年6月24日ニュース

ファミリービジネス関連の書籍を紹介する「J.P.通信」でEps.19 為末 大著『心のブレーキを外す。』を投稿しました。

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「Zoom飲み」や「お家時間」といったワードを最近やたらと見聞きします。どんな状況に置かれても楽しむ心を忘れない・忘れさせない工夫をする気持ちは、ビジネスシーンでも大きなチャンスに繋がると感じました。それは、私たちの日々の心掛けにおいてもきっと同じでしょう。

今回ご紹介するのは、個人レベルでの「変化」に関する著書です。著者は為末大さん。皆さんもご存知の通り、陸上競技の400mハードルの日本記録保持者で、世界陸上で2度銅メダルを獲得した歴史に残る名選手です。現在は現役を引退し、自身で会社を設立。スポーツを介した社会の課題解決をテーマに、様々な講演を行い、今や元陸上選手という枠を超えた活躍を見せています。

自身でも読書好きを公言している為末さんの言葉には、誰にでもすっと理解できるスマートな印象を持ちます。自身の選手時代を見つめて彼が行き着いた答えとは何か。是非、ご一読下さい。

J.P.

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「心のブレーキを外す。」

為末 大 著

 

著書の中で為末氏が問題視するものの中に、「限界の檻」というものがある。これは私たちが自分自身の思考、つまり心でつくり出すものであり、つまりは「限界」とは、私たちがそう思い込んでいるだけなのだということだ。さらに厄介なのは、私たちがその檻の中にいることに、次第に心地よさを感じてしまい、いわゆる「現状維持という名の停滞」をしてしまうことである。「停滞」に陥ってしまっている人々がいかに勿体ないことをしているのか、そしてそこからどうやって脱すれば良いのだろうかか。

『いかなるときも、自分の可能性を信じられる人。考えすぎて、動けなくなる「限界の檻」から脱し、自分の限界を、自分で引き上げて、チャレンジし続けられる人。すぐに行動に移せる人。』というメンタルの在り方に為末氏は行き着いた。

為末氏は著書の中で、自身の陸上人生をその時の心情と合わせて正確かつ冷静に語っている。人生で初めて感じた「限界」という壁。100m走では勝負出来ないと考えた時、400mハードルへの転向を決めた理由。ようやく銅メダルを手にした後、金メダルを期待する世間の注目に対する正直な胸の内。現役を引退した後、人前で話すことになった今の自分自身に思うところなど、巧みな筆致でまとめ上げている。

その優れた文章表現の裏には、為末氏自身の相当量の知識の蓄積が窺える。多くのスポーツの歴史や、様々な実験を通して得られた興味深いデータ、ソクラテスや孔子の引用など、様々なものから自身の哲学を作り上げている。その着眼点は、現役時代もコーチを持たず、ほとんどを自己責任で行ってきた為末氏ならではのものだ。その中で、「人生とは究極の複雑系の競技」というフレーズがある。

例えば、もともとの身体能力の良し悪しだけでほとんど勝負が決まってしまうような単純な競技ではそこに「限界」を感じてしまいやすいが、それ以外の部分を求められる競技では、経験したことのない世界つまりは限界を感じにくい環境に身を置くことが出来る。そこから今やるべきことに集中し、「正しい努力」をすることで大きな結果につながることもあると、為末氏はハードル競技という複雑系の競技における自身の経験からこの気付きを得た。誤解を招かないようここで付け加えておきたいのは、「正しい努力」とは、限界を感じた世界から180度違う方向転換をすればいいという意味ではない。限界を感じた今の自分自身が持っている本質的な要素を理解し、その要素を6、7割引き継いでいる方向に向けてエネルギーを注ぐということだ。人生の良し悪しはその個人の持つ「総合力」で判断すべきである。1つの目標に対しての努力が結果に追いつかなかったとしても、少し方向の角度を変えれば、思わぬ自分の可能性に出会うこともある。そしてその少しの勇気が、自分を含め多くの人々の「幸福」にも繋がると思うのだ。

いまだ見知らぬ自分に出会い「限界の檻」から脱するためには、例外なく必要な儀式がある。それは「全力を尽くす」こと。全力を出し切って、自分の真の能力を知って、限界を体感して理解することこそ最も大切なことだと為末氏は語る。そもそも、「現状維持という停滞」状態の人たちは、この全力を尽くす以前の問題なのだ。何もしないうちから、「これが自分の限界だ」と何かを理由にして諦めている。

世の中には、何でも知っているような気になっている人もいるが、歴史の偉人たちが指摘している通り、おそらくそんなのは「分かったつもり」なだけなのだろう。生きている限り、私たちが知らないこと、経験できることはいくらでもあるのだ。そんな世の中の広さを知る努力もせず、自分で勝手に作り上げた「檻」の中で、自分だけの安らぎに飼い慣らされて無難に人生が終わってしまう。そんな生き方、「勿体ない」という以外何があるだろう。

どんな人にも、その人にしか送ることの出来ない素晴らしい人生がある。それを決めるのは、私たち1人1人の心の持ち方なのだ。この本を読んで、何かを感じる人がいたとすれば、その感覚、体感を、自分自身が理解できるよう全力を尽くすことが大切なのだろう。それはあなたの、自分の「限界の檻」から抜け出したいという本当の気持ちが、しっかりとそこにあるという証だと思うからだ。私自身、そうあり続けたいと、願っている。

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