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2020年6月4日ニュース

ファミリービジネス関連の書籍を紹介する「J.P.通信」でEps.17を投稿しました。

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早くも6月になり、じきに本格的な夏でしょうか。マスクをすると前にも増して息苦しさを感じます。緊急事態宣言解除となったものの、まだまだ段階的な部分も多く手放しでは喜べませんが、一歩前進と信じたいところです。1日も早い収束を願います。

今回は、近年のビジネスにおいて問われる「利他の精神」の重要性をカフェ経営という視点から捉えた著書の紹介です。JR中央線で24ある快速電車の中で、最も乗降者数の少ない駅「西国分寺駅」という立地にも関わらず、2013年に「食べログ カフェ部門」全国1位となったクルミドコーヒー。その店主であり、かつては経営コンサルティングやベンチャーキャピタルと、ある意味異色の経歴を持つ影山さんの体験談に基づいた経営哲学には、カフェという立場ゆえの説得力があります。是非、ご一読下さい。

J.P.

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「ゆっくり、いそげ  カフェからはじめる人を手段化しない経済」

クルミドコーヒー店主  影山 知明 著

 

「50年続くお店にしたい」。クルミドコーヒーオープンの前夜祭で、著者である影山氏はこう想いを語った。しかし50年後、自分自身この世にいない可能性の方が高い。損得ではない次元で、長いスパンのチャレンジを始めようとしているという覚悟の認識だった。と同時に、祖父母から受け取ったもの(西国分寺の土地)を、何らかの形で次へと贈らねばならないという使命感に駆られていた。

2008年にオープンして以来、クルミドコーヒーを通して影山氏は多くのチャレンジを行ってきた。音の葉コンサートの定期的な開催、クルミド出版での本の出版、地域通貨「ぶんじ」を通しての地域活性化、クルミドの朝モヤ(勉強会)の定期的な開催によるカフェの新たな在り方の模索など、カフェをエンターテイメント業と語る影山氏の心中には、自身の経歴ゆえにたどり着いた答えがある。

タイトルにもある「ゆっくり、いそげ」。これはラテン語で”festina lente(フェスティナ・レンテ)”といい、クルミドコーヒー運営会社の名前であり、影山氏が重要視するこれからの経済や社会を考えるときの基本指針だといえる。かつて自身も経営コンサルティングやベンチャーキャピタルの仕事に携わっていた中で、多くの例を目にしてきた。資金繰りに追われ、当初の自分たちの「目的」や目標達成のための手段であったはずのカネが、いつしか「目的」そのものになってしまっている。何より、個人としてはそのことを強く望んでいるわけではなく、「仕方なく」やっているのだというのが事実だ。それはいつしかお互いの「利用し、利用される」関係の広がりをうみ、人々が仕事に自分の「存在」を傾ける理由を虚ろにする。そんな中影山氏が可能性を感じるのが、「特定多数経済」の実現だ。

具体的には、両者の間の交換の原則を「テイク」から「ギブ」に切り替えるという発想だ。ギブ、つまり「支援する」関係性は相手中心の行動様式だ。例えばAさんがBさんに対し商品を売るなどの形を通して何かしらの「支援」をし、その動機が無償のものであれば、そこから生まれる「健全な負債感」によってBさんはAさんに何かしらのお返しをしたいと思う。贈るという行為には、受けるという行為を含んでおり、その逆もまたしかり。それがAさんとの間の価値観の共有として成立するか、さらにCさんへと広がっていくか、その両方か。いずれにしても両者の関係は相互浸透的で対話的なやり取りで成り立っている。もちろん現実問題、これを経済として成り立たせるには、著者曰く5000人ほどの一定規模でこの「特定多数」を形成し、比較され競争する環境の中でも選ばれる存在であることが求められるが、利他的な支援を行うことが、自己の利得までを最大化しうると、影山氏は見ている。

「特定多数経済」のモデルケースとしてクルミドコーヒーが心がけているのが、「ゆっくり、いそげ」である。どんな仕事にも、それをつくる人の「存在」が感じられるものづくりをすること。「存在」を傾けた、手間ひまのかかった仕事をちゃんとすること。そしてこの考え方は、カフェに限らず、「世の為人の為」に仕事をする人全てに応用できるものだと感じる。

今の速さが求められる時代、私たちの価値にかける時間は評価されにくくなった。時に置いて行かれることのリスクが高くなり、時間をより非情なものに感じるようになったかもしれない。だからこそ、今一歩その歩みを止める勇気を、私たちは今こそ持つべきなのだろう。自分の存在を、もう取り返しのつかない「無」にしてしまわないためにも。だからといって、何か特別なことをする必要はないのだと思う。「支援」のやり方のヒントは、きっと私たちのすぐそこにあるものなのだ。まずは、その止めた分の時間を自分自身に「ギブ」することが、「ゆっくり、いそげ」の精神につながるものだと信じたい。

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